表具された文字(書)を見て文字(書)の意味に気付く。 それは表具の意味に気付くことでもある。 口(サイ)はのりとを入れる器のことだと白川静は発見した。 このあたりのことについて「白川静先生を悼む」(内田樹)から引用させていただきます。 『人間社会の起源には非文化から文化に「テイクオフ」する瞬間の劇的な快感が存在する。 別にその場に居合わせたわけではないから、断言するのは憚られるのであるが、たぶんそうだと思う。 文化とはこの浮遊するような快感をもう一度味わいたいと願った人々が反復した行為が集団的に模倣され、やがて制度化したものである。 だから、人間的諸制度の基本には「気分を高揚させる」か、または「悪い気分を抑制する」身体的実感があったはずである。 そうでなければ、文明が始まるはずはない。 白川先生の漢字学は、古代中国においては、地に瀰漫していた「気分の悪いもの」を呪鎮することが人間たちの主務であったという仮説の上に構築されている。 古代の人間はそのほとんどの時間とエネルギーを「邪気」を祓うために費消していた。 それが有名な白川先生の「サイ説」である。 「サイ」というのはこのフォントでは再現できないけれど、英語のDの弧の部分を下向きにしたかたちである。 この文字を後漢の『説文解字』以来学者たちは「口」と解した。 白川先生はこれを退け、これが呪具の象形であるという新解釈を立てた。』 「この基本形であるサイの従来の解釈が誤りであるとすれば、その系列に属する数十の基本字と、その関連字とは、すべて解釈を改めなくてはならない。誤解のもとはサイを口の単なる象形と解し、文字映像におけるその象徴的意味を把握しえなかった点にある。」(白川静、『漢字百話』、中公文庫、2002年、41頁) 白川先生によればサイとは「のりとを入れる器」である。span> 人間的諸制度の基本には「気分を高揚させる」か、または「悪い気分を抑制する」身体的実感があったはずである。 「人間的諸制度」を「表具」の置き換えてみる。 地に瀰漫していた「気分の悪いもの」を呪鎮することが人間たちの主務であったという仮説の上に構築されている。 表具をこのような観点から見る必要があると思う。 ・・・・・・・・・とりあえず。
by jikugen
| 2010-09-14 06:35
| 表具日記
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